山に対する思いは本気
「我々ガ死ンデ、死ガイハ水ニトケ、 ヤガテ海ニ入リ、魚ヲ肥ヤシ、 マタ人ノ身ヲ作ル、個人ハカリノ姿 グルグルマワル 松ナミ」という一節は大変有名で、この一冊全てが遭難記かと思っていたら、そうではありませんでした。
大半は氏の紀行文で、これがまた驚き。なんと戦時中の記録もあるのですから。全てが押さえつけられていたのかと思いきやさにあらず。昭和17年と18年だけでも20回ほど登っているようです。
それだけ本気でやっていたのでしょう。レジャーとしての登山しか知らない私にはけっして真似できないスタイルです。
登山家は山を想いながら眠るのか
1949年、若干26歳にして槍ヶ岳・北鎌尾根に消えた天才クライマー、松濤明の死の直前まで書き綴られた最期の手記。 井上靖のベストセラー「氷壁」のモデルにもなっていたことは随分後になってから知ったが、この本を初めて読んだのは中学生の時の授業だった。 担当の教師が本格的な登山家で、授業中によく登山の話をしてくれた。ワラ半紙にこの本を印刷して配り、数日に渡っていつも以上に熱のこもった授業をしてくれたことを思い出す。 その1年後、彼はエベレストに行き登頂、無事成功し生還した後もまた中学教師を続けていたが「教師か登山か」と当時の校長に選択を迫られ、山を選び教職を去った。 (「スポーツでメシが食えるか?」別冊宝島298に当時の話が詳しく掲載されているそうだ。) あれから十数年。たまたま本屋で見かけ、当時のことを懐かしく思いながら改めて読んだ。 -我々ガ死ンデ、死ガイハ水ニトケ、 ヤガテ海ニ入リ、魚ヲ肥ヤシ、 マタ人ノ身ヲ作ル。- 登頂記録から遭難して一転、風雪の中体力尽きたパートナーと共に死を決意し、遺書へと変わる様は余りにも壮絶で潔く、そして美しい。 「家族には申し訳ないけど結局、登山家という奴等は山で死ぬのが本望なんだ。」とその教師がよく言っていた。 同著者の「山を想う心」という随筆も機会があれば併せて読むことをお勧めするが、山男という人種は大概どうしようもなきロマンチストである。 読み物として一流。登山に興味がない人でも楽しめるので是非読んで頂きたい一冊。
二見書房
二人のアキラ、美枝子の山 ヒマラヤを駆け抜けた男―山田昇の青春譜 (中公文庫) 狼は帰らず―アルピニスト・森田勝の生と死 (中公文庫) 孤高の人 (上巻) (新潮文庫) 喪なわれた岩壁―第2次RCCの青春群像 (中公文庫)
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